下肢静脈瘤とは

> 下肢静脈瘤 > 下肢静脈瘤とは

「足の血管がぼこぼこ浮き出ている」
「足がむくみやすい、重くて疲れやすい」
「夜中、朝方に足がつる」
それは『下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)』という病気かもしれません。
ここでは『下肢静脈瘤』について、症状、種類、原因、治療法などをわかりやすく解説していきます。

足の写真

下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)とは

下肢静脈瘤とは、脚の静脈に起きる血管疾患です。
脚には多くの静脈がありますが、大きく二つの静脈に分けることができます。
脚の奥を流れる太い静脈「深部静脈(しんぶじょうみゃく)」と表面を流れる細いけれども無数にある静脈「表在静脈(ひょうざいじょうみゃく)」です。下肢静脈瘤は、「表在静脈」がこぶ状に膨れたものになります。

下肢静脈瘤の症状

下肢静脈瘤には多くの症状があり、その種類や程度は人によって様々です。
足の血管がボコボコしている、浮き出ている、目立つ、などの見た目の変化の他に、多くは、むくみや張り、だるい、重い、疲れやすい、などの症状が出てきます。
また熱感や火照り、それとは逆に冷感という症状がでる方もいます。稀ですがふくらはぎから足底部にかけてのしびれの症状を訴える方もいます。また夜間や朝方のふくらはぎの足攣れ(こむら返り)も多く見られる症状です。

伏在型静脈瘤の写真

さらに静脈瘤の症状が進行すると、皮膚のかゆみや皮膚炎、湿疹、皮膚色素沈着へと悪化してきます。これは重症化する危険信号になります。さらに悪化すると、皮下脂肪へも炎症が進み、皮膚硬化となり、最終的には潰瘍形成となり、なかなか治らない(難治性)の状態になってしまいます。

下肢静脈瘤の症状チェックリストへ

下肢静脈瘤の原因

静脈の主な役割は、心臓が拍動することにより動脈に送り出された血液を、また心臓に戻すことにあります。人間は2本足で立って生活していますので、寝ている状態のときを除いて、静脈内の血液は心臓と下肢の約1mの高さの差を地球の重力に逆らって上がっていかなければなりません。しかし血液は重力に従って下に向かって流れようとしてしまいます。その逆流を防ぐために静脈には「ハ」の字の形をした弁「逆流防止弁」がついています。

下肢静脈瘤が出来てしまう仕組みの説明

妊娠や出産、立ち仕事などで強い静脈圧がかかり続けることでこの弁が壊れてしまうことがあります。
逆流防止弁が機能しなくなると、慢性的に血液が逆流し、静脈内に血液がたまってしまうことで静脈がこぶのように膨れて静脈瘤となります。
また、加齢による筋肉のポンプ機能低下も下肢静脈瘤が出来る一因となります。

下肢静脈瘤ができやすい人の特徴

下肢静脈瘤のできやすい方。女性(男女比1:4)妊娠出産が大きく影響あり、年齢の高い方(加齢による血管の弱まり)、遺伝性、立ち仕事、座り仕事、肥満

下肢静脈瘤の種類

下肢静脈瘤には、大きく分けて4つの種類があります。ボコボコと瘤になる伏在型静脈瘤・側枝型静脈瘤、青や赤紫に浮き出る網目状静脈瘤・くもの巣状静脈瘤まで様々です。それぞれの種類の下肢静脈瘤について詳しく説明しているページにもリンクしています。それぞれの静脈瘤に適した治療法などもご案内していますので、併せてご覧ください。

下肢静脈瘤を木に例えて説明しています

伏在型静脈瘤(ふくざいがたじょうみゃくりゅう)

足の最も太い表在静脈である大伏在静脈、小伏在静脈に形成される静脈瘤で、下肢静脈瘤に悩む多くの方(約70~80%)がこのタイプになります。
見た目:血管がぼこぼこと浮き出ていることが特徴です。

伏在型静脈瘤について詳しくはこちら>
下肢静脈瘤①伏在型静脈瘤の写真

側枝型静脈瘤(そくしがたじょうみゃくりゅう)

伏在静脈から枝分かれした静脈が膨らんでできたものが、側枝型静脈瘤です。分枝(ぶんし)静脈瘤ともいいます。症状は軽い場合が多いです。
見た目:血管のぼこぼこが、ふくらはぎや太もも、太ももの後面にできることが多いです。

側枝型静脈瘤について詳しくはこちら>
下肢静脈瘤②側枝型静脈瘤の写真

網目状静脈瘤(あみめじょうじょうみゃくりゅう)

皮下の浅いところにある細い静脈(皮下静脈:直径約1-2mm)が拡張してできた静脈瘤です。網の目にみえることが多いため、網目状静脈瘤といわれています。
見た目:青色に浮き上がってみえます。血管の隆起(ボコボコ)はそれほどありません。

網目状静脈瘤について詳しくはこちら>
下肢静脈瘤③網目状静脈瘤の写真

クモの巣状静脈瘤(くものすじょうじょうみゃくりゅう)

皮膚表面のとても細い静脈(真皮内静脈:直径1mm以下)が拡張してできた静脈瘤です。血管がクモの巣のように放射状に広がって見えるのが特徴です。毛細血管拡張と言われることもあります。
見た目:紫色や青色で浮き出てみえます。血管の隆起はありません。

クモの巣状静脈瘤について詳しくはこちら>
下肢静脈瘤④クモの巣状静脈瘤の写真

以上が、下肢静脈瘤の4つの種類になります。下肢静脈瘤は、命に関わる病気ではありませんが、下肢静脈瘤が悪化すると、湿疹や黒ずみ、色素沈着などが出てきたり、潰瘍が出来てしまう場合があります。それらが出てきた時には、脚からもう限界ですという悲鳴が上がっている状態です。気になる症状がある場合は、悪化する前にまずは診察を受け、ご自身の脚の状態を知っておくことが大切です。

下肢静脈瘤の検査方法

診察時に問診(話を聞く)、視診(目で見る)、触診(手で触る)という基本的な検査を行います。その上で、超音波ドップラー検査(いわゆるエコー検査)を行います。立位にて10分ほどで行う検査で、痛みもなく安全に行える検査になります。
超音波検査により下肢静脈瘤の有無や、その範囲、大きさの評価ができます。また血栓の有無や、エコノミークラス症候群のチェックも行えます。

超音波検査機器の写真

下肢静脈瘤の治療法

当院では、院長を中心に、東大血管外科グループの血管外科医が下肢静脈瘤の診察、検査、診断、治療を行います。現在日本で行われている下肢静脈瘤に対するすべての治療(下肢静脈瘤ストリッピング、血管内レーザー焼灼術、血管内ラジオ波焼灼術、血管内塞栓術(グルー手術)、硬化療法)を行っています。これらはすべて保険の適用で受けられます。また硬化療法で対応できないようなとても小さな静脈瘤ではレーザー照射(自費治療)も行っています。また当院独自のカテーテル治療の進化型である東京ヴェインクリニック法(TVCメソッド)も行っています。
当院の下肢静脈瘤手術の術後経過および成績はとても良好です。さらに最新の機器を用いた当院での下肢静脈瘤の治療は、治療を受けた患者様からとても高い評価を受けています。

ELVeS1470レーザー機器

圧迫療法

圧迫療法(あっぱくりょうほう)は下肢静脈瘤のタイプにかかわらず最も基本的な治療になります。 伸縮性に優れた医療用弾性ストッキングを着用することで、静脈うっ滞を改善し、むくみや重足感を緩和させる治療法です。
下肢静脈瘤を根治するための治療ではなく、あくまでも悪化を遅らせたり症状を軽くするための保存的治療になります。
また当院では、下肢静脈瘤に対するレーザー手術やラジオ波手術、硬化療法などの治療後には医療用弾性ストッキングを着用していただいています。

圧迫療法について詳しくはこちら>

硬化療法

硬化療法(こうかりょうほう)は、静脈瘤の中にポリドカスクレロールという薬剤(硬化剤)を直接注入して閉塞させる下肢静脈瘤の治療法です。閉塞した静脈瘤は数か月で徐々に消えていきます。
クモの巣状静脈瘤や網目状静脈瘤、側枝静脈瘤など、直径3mm以下の細い静脈瘤に適した方法で、施術時間は10分程度と短時間での治療が可能です。

硬化療法について詳しくはこちら>

レーザー硬化療法

レーザー硬化療法は、ヤグレーザーという医療用レーザー機器を使用し、身体の外からレーザーを照射して下肢静脈瘤を閉塞させる新しい治療法です。
主に、硬化療法ができないような極小のクモの巣状静脈瘤に適用されます。

レーザー硬化療法について詳しくはこちら>

ストリッピング手術(抜去切除術)

ストリッピング手術とは、弁の壊れた伏在静脈を抜去する手術のことです。100年も前から行われている歴史のある下肢静脈瘤の手術方法になります。伏在型静脈瘤の治療に適用される手術として最もポピュラーな方法で、再発率が低く、実績のある下肢静脈瘤の根治手術でした。 数年前までは標準手術として多く行われてきましたが、現在ではカテーテルを使用した血管内治療にその座をゆずっています。

下肢静脈瘤血管内焼灼術(レーザー手術・ラジオ波手術)

下肢静脈瘤血管内焼灼術(-けっかんないしょうしゃくじゅつ)とは、逆流のある伏在静脈内に極細のレーザーファイバーやカテーテルを入れて、血管内の壁を熱で焼き、閉塞させる手術です。ボコボコとした大きなタイプの下肢静脈瘤(いわゆる伏在型静脈瘤)の標準的な治療法となります。2㎜程度の切開での手術になるため、ほとんど傷が残りません。
現在日本で行う血管内焼灼術は、レーザー、もしくはラジオ波を使って手術を行います。当院では患者様の下肢静脈瘤の状態に合わせてどちらを用いるか判断しています。

時々、血管をなくしてしまって大丈夫なのかと心配される方がいらっしゃいますが、脚の静脈に流れる血液のうち約90%は深部静脈という大きな血管を流れています。深部静脈が正常に機能していれば伏在静脈はなくなっても問題はありません。また伏在静脈を流れていた血液は他の静脈を流れるようになります。伏在静脈が原因で静脈瘤が出来ている場合、壊れているその静脈自体が血液の流れを邪魔して脚の大きな負担になってしまっていることが多いので、なくしてしまった方が負担が減り、脚の症状が軽くなります。
特に、正常な大伏在静脈については他の病気で血管が必要になった際、脚から取って使われることがある静脈です。
なくしたことで更に血流が悪くなってしまう、ということはありませんので、心配しなくても大丈夫です。

下肢静脈瘤レーザー手術についてはこちら> 下肢静脈瘤ラジオ波手術についてはこちら>

下肢静脈瘤血管内塞栓術(グルー手術)

下肢静脈瘤血管内塞栓術(-けっかんないそくせんじゅつ)とはボコボコと浮き上がる静脈瘤の原因となっている静脈にカテーテルを挿入し、NBCA(n-butyl-2-cyanoacrylate;ヒストアクリル)という瞬間接着剤(アロンアルファのようなもの)を注入し、血管を塞いでしまうというより低侵襲な下肢静脈瘤の治療法です。
熱による周囲組織のダメージ、痛みがありませんので、下腿部のカテーテルを挿入する部分のみの少量の局所麻酔で手術を行うことができます。

下肢静脈瘤グルー手術について詳しくはこちら>

TVCメソッド

当院では通常のレーザー手術、ラジオ波手術に併せて枝の部分のレーザー焼灼術を加えた方法TVCメソッド(東京ヴェインクリニック法)での下肢静脈瘤の手術を行っています。これは通常5-10mm程の傷で切除が必要になるようなぼこぼこした静脈瘤を大きな傷をつけずにレーザーで処理する方法です。

下肢静脈瘤手術TVCメソッドについて詳しくはこちら>



下肢静脈瘤の手術症例

下肢静脈瘤治療の費用

東京ヴェインクリニックでは下肢静脈瘤の各種カテーテル手術やその他硬化療法などの治療についても通常の健康保険で受けられます。カテーテル手術では片足では1割負担の方で14,000円程度、3割負担の方では42,000円程度で受けられます。また、両足の手術を行う場合、高額医療保険制度が適応される場合があります。日帰り手術なので、入院の必要がありません。通常の入院手術に比べても格段に費用を抑えることができます。血管内塞栓術(グルー手術)も保険適応となり、3割負担の方では53,000円程度で受けられます。

詳しい費用はこちら

下肢静脈瘤の予防

下肢静脈瘤は、残念ながら一度発症してしまうと、自然に治るということはありません。また、きちんと治療した場合でも、再発することがあります。大切にしたいのは、「予防すること」です。

  1. 日常生活の中に適度な運動を取り入れる(ウォーキングなど)
  2. 長時間の立ちっぱなし、座りっぱなしを避ける(20~30分に1回は足を動かす)
  3. 足首を回したり、つま先立ちをしたりなど、こまめに身体を動かす
  4. ふくらはぎのマッサージなどを積極的に行う
  5. 弾性ストキングを日中に着用する
  6. 足を高くして寝る
  7. 適正な体重維持(肥満を避ける)
ウォーキングしている写真

以上のことを行い、下肢静脈瘤の予防に努めましょう。

下肢静脈瘤 Q&A

Q

下肢静脈瘤の診察は何科に行けばいいですか?

血管外科・心臓血管外科の血管外科専門医のいる病院やクリニックの受診をお勧めします。

Q

下肢静脈瘤は自然に良くなることはありますか?

残念ながら、自然に良くなることはありません。虫歯と同じで、徐々に進行していく病気です。
ただ、弾性ストッキングでの圧迫療法を行うことで、進行を遅らせることがあります。

Q

下肢静脈瘤を放っておくとどうなりますか?

徐々に進行し、むくみ、重さ、ダルさの症状が出てきます。さらに悪化すると、皮膚炎、湿疹が出てきます。更に進行すると、脂肪皮膚炎、皮膚硬化、皮膚潰瘍と重症になってしまうことがあります。

Q

下肢静脈瘤の治療を受けるのに入院は必要ですか?

当院ではすべての治療を日帰りで行っています。

Q

下肢静脈瘤手術の術後に制限はありますか?

術後一週間は、激しい運動などは控えてもらいます。ただ、自転車に乗ったり、小走りしたりは問題ありません。また二週間程は長時間の飛行機などは禁止しています。

その他のQ&Aはこちら

下肢静脈瘤は命に関わる病気ではありませんが、
合併症を引き起こす危険性があります。

下肢静脈瘤が重症化してしまうと、潰瘍化したり皮膚疾患を起こしたりと、極めて治りにくくなってしまいます。しかし、それによって生命の危機にさらされる、ということはもちろんありません。歩行できなくなったり、足が壊死して切断しなくてはならなくなったりするのでは…、と心配される方も多くいらっしゃると思いますが、その心配もありません。しかし、「うっ滞性皮膚炎」や「皮膚潰瘍」などといった合併症を併発すると治療に期間を要することになってしまいます。また「深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)」などの重大な病気を引き起こす可能性も少ないながらあります。
そうならないためには、まずは血管専門医による診察を受け、下肢静脈瘤の正しい知識を持ち、必要があれば治療を受け、また普段から予防や進行防止を心がけることが何よりも大切になってきます。

続いては、
初診から治療までの流れを説明します治療の流れ
東京ヴェインクリニックについて説明します初めての方へ